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『次郎長三国志』(2008年/角川)
監督:マキノ雅彦 脚本:大森寿美男
出演:中井貴一、鈴木京香、岸部一徳、佐藤浩市
2008年9月20日公開 不安半分期待半分だったものの、細かいことを置いておけば、とりあえずは126分という時間を感じさせない楽しい娯楽映画になっていた。観る前はキャストに違和感ありまくりで、法印大五郎なんか「お願いだからCGで
田中春男を甦らせて!」とまで思ったけど、
笹野高史も意外と悪くなかったなぁ。
さて、'50年代・'60年代のマキノ雅弘版は、何部にも分かれているということもあって、必ずしも1本の映画の中で次郎長一家が悪玉と遭い、彼らを倒すまでが描かれているというわけではなかった。むしろ一家の面々が酒飲んでわちゃわちゃ戯れているシーンがほとんどで、それを眺めているのが楽しいというか…。
今回ももちろんそういう男子校的グループものとしての要素はあるけれど、全体的に年齢が高めなので皆もうちょっとオトナな感じ。それよりも、オーソドックスな任侠映画としての色が強めだったように思う。1人デカい敵を設定して、そのラスボスとの対決に向けて後半盛り上がっていくという作り。そこに次郎長とお蝶の夫婦愛を絡めてとっつきやすい風にもなっている。
しかし気になるのはメインキャストの年齢層。やはり旧作と比べて全体的にちょい年齢高すぎでは?と気になったので、東宝版・東映版・最新版の役者の年齢を調べてみた。一部ちゃんとした年齢がわからない人がいます、ごめんなさい。それから、今回の北村一輝。役名は小政だけど、原作の小政と三五郎を合わせたキャラクターになっているそうである。

こう見てみると、東映版とは特に差が目立つ。まぁこれはあくまで役者の年齢であって、設定では次郎長は30半ばぐらいなイメージなのかもしれないけれど。
でも脚本は高めの年齢を意識しているのか、今回の次郎長は、わりあいしっかりした親分さんになっていた。
小堀明男の場合「ほっとけないなぁ」って思わせるような親分だったけど、
中井貴一は「ついていきたい」と思わせるような親分。なぜついていきたいと思えるのか、それがわかるような石松とのやり取りもあり。ここは今作オリジナルのいいシーンだった。
ところで、先日、何気なく見ていたクイズ番組に、この映画の宣伝で
津川雅彦や
長門裕之が出てきてビックリ。おじいちゃんたち大丈夫かしら、と思わず見入ってしまった。
時間内に漢字の読みをキーボードに打ち込んでいくクイズでは、やはりキータッチが間に合わず失格になる次郎長チーム。もう〜こんな大変なことさせないでよぉと、見ていて思わず孫のような気持ちに…。それにしても、とりあえず長門裕之が元気そうでホッとした。
だって、映画の中の長門裕之はそれはもう年老いていて、'60年代の長門裕之ばかり見ている身としてはちょっぴり衝撃だったのだ。しかしこの人の芸暦ももう70年近いのだし、考えてみれば、東宝版から最新版まですべてに出演している唯一の役者なのである。東宝版ではいちばんあとから一家に加わる町の不良少年みたいな役だったのに対し、今回は鬼吉の老いた父親役! つくづく時の流れを感じるわけである。
思えば、最初の東宝版からもう56年。古くさい、理解できないと言われかねないようなジャンルの作品でありながら、こうして56年経ってもちゃんと頑張って甦らせようとする津川雅彦の姿勢は評価したいと思う。
殺陣については何も言うまい。あと音楽もまったく好みじゃなかった…。しかし何よりわたしゃ、長門・津川兄弟が慣れないクイズ番組に出てまで宣伝するその心意気を買いたいね! 細かいことを言い出せばきりがないけど、「次郎長三国志」入門としては悪くないと思うのだ。
大政の落ち着いた忠実ぶり、
法印さんのずうずうしいけどどこか憎めない愛嬌、
鬼吉と
綱五郎の子供じみた掛け合い、やんちゃな
石松の純粋さ。次郎長一家のみんなが活き活きしてりゃーそれでいいじゃんと思ってしまう私なんかは、この辺がちゃんと押さえてあったので、じゅうぶん満足。
ただ、地味なんだよね。キャラものとしてはキャストが渋すぎる。東映版ぐらいのバランスで、一家の中にあと1人か2人、華のあるスターがいればなぁと個人的には残念に思うところだった。